スポーツとSDGsを通して共生社会の実現へ──東京ヴェルディが「SDGs²スタジアム」を始動

2021/07/01

東京ヴェルディは年齢、性別、障がいの有無などにかかわらず、あらゆる人にスポーツの楽しさを伝え、そしてその活動を通してSDGs(持続可能な開発目標)を達成することを目的として、ホームタウン東京都での『スポーツ&SDGs普及活動』を展開しています。2021年からは国際連合(国連)の正式な承認を受けて、トップチーム選手、ベレーザ選手、普及部コーチのウエアにSDGsロゴを掲出しています。

4月20日(火)に、その活動をさらに推進していくためのイベント『SDGs²スタジアム2021キックオフトークセッション』を開催しました。

SDGsとはSustainable Development Goalsの略ですが、東京ヴェルディの活動において『SDG』はもうひとつの意味を持ちます。Sはそのたのしさを伝えることが目的である『SPORTS』、Dは活動のテーマである『DIVERSITY』(多様性)、そしてGは私たちのコーチングスローガンのひとつである『GREEN』(右記ワードの頭文字:Grassroots / Respect / Education / Enjoy / Normalization)。これらのワードは、東京ヴェルディの活動の根幹をなすものです。

このイベントを通してふたつの『SDG』をさらに普及していくという思いと、さまざまなパートナーとさらなる相乗効果を生み出していけるようにという願いを、『SDGs²スタジアム』(読み方:エスディージーズスタジアム)というタイトルで表現しました。

トークセッション01『スポーツ界から変えていくジェンダー平等社会』

ひとつめのトークセッションでは、SDGsの17の目標のなかから『5 ジェンダー平等を実現しよう』をメインテーマに意見を交換しました。

東京ヴェルディのSDGsパートナーであるヤンセンファーマ株式会社の広報リード岸和田直美さんからは、ヤンセンファーマそしてジョンソン・エンド・ジョンソングループが、『ダイバーシティ, エクイティ&インクルージョン』の概念をいかに経営上の重要な戦略に位置づけているか、そしてそれをどのようなアプローチで実践しているかについての話がありました。
135年前の創業時から数多くの女性が活躍してきたジョンソン・エンド・ジョンソングループには、有志社員によるさまざまなボランティアグループのひとつにWLI(Woman's Leadership & Inclusion)という女性の活躍を後押しするグループがあり、日本では200名いるそのメンバーの男女比率は50%ずつとのこと。女性中心の構成ではなく、男女同数のメンバーで女性活躍という目標に向けて活動している点が特徴的です。

女性が少ないというイメージの強い金融業界からは、フレスコ・キャピタルの鈴木絵里子さんが登壇し、投資家目線での意見や世界のビジネスにおける女性に対する評価について話しました。女性のニーズを取り入れたFemTech(フェムテック)関連の商品開発や、無意識の偏見をそぎ落としてビジネスとしての価値を見極めることの重要性などについて、スポーツ界に対しても示唆に富んだエピソードが数多くありました。

そのスポーツ界からは、まずWEリーグの小林美由紀理事が発言。女子サッカーにおける世界と日本の現状や、今年9月からのプロリーグ開幕にかける思いについての話がありました。今は女性活躍の意味でWomen Empowerment Leagueとしているものの、いちいちそれをうたう必要がない、本当の"WE League=私たちのリーグ"にしていきたいという目標は、サッカー界全体で実現を目指していくべきものです。

もちろん女性だけでなく、トークセッションには男性も登壇しています。Jリーグ社会連携室の鈴木順室長からは、クラブとJリーグにおける女性スタッフ数の違いや、女性サポーターが来場しやすいスタジアムの重要性、中学生年代の女子サッカーのプレー環境拡大についての意見がありました。また鈴木絵里子さんの紹介したFemTechの有効性についても積極的な考えを示しました。

東京ヴェルディ普及部の中村コーチは、クラブとしてSDGsを推進していく決意を改めて述べるとともに、これまでは男性コーチだけで指導することが多かったホームタウンでの障がい者スポーツ体験教室実施時などにおいて、今後はチアダンスチームVERDY VENUSと連携するなどして、男女コーチ体制での活動を拡大していくことを宣言しました。

トークセッション02『スポーツを通じて実現するノーマライゼーション社会』

東京ヴェルディによるSDGsプロジェクト『ともに未来へ Green Heart Project』および『Green Heart Room』の動画に続いて、会場では『3 すべての人に健康と福祉を』をメインテーマにふたつめのトークセッションが開始されました。

まずはヤンセンファーマ株式会社の岸和田さんから、医薬品を開発する企業でありながらも『Beyond Medicine(薬剤を超えて)』というテーマを掲げる理由と、さまざまな方法でこころの病と向き合う人の社会復帰をアシストし、ノーマライゼーション社会を実現していくことに対する明確なビジョンが語られました。
東京ヴェルディとの協働事業である『ともに未来へ Green Heart Project』はまさにその大きな取り組みであり、ヤンセンファーマと東京ヴェルディのもともとの事業内容は違っていても向いている方向が同じであること、味の素スタジアムでプロジェクトに参加してノーマライゼーションを体感できたことなどを、岸和田さん自身の実感のこもった言葉で伝えられていました。

続いて発言したパラトライアスロンの木村潤平選手は、パラリンピックに過去4回も出場している素晴らしいアスリートです。アジア選手権出場前のため、この日は開催地の広島からオンラインでの参加となりました。木村選手も昨年のGreen Heart Projectに参加していて、また自身もパラスポーツ推進イベントを積極的に実施していることから、さまざまな障がいのある方、障がいのない方、高齢者の方などが一緒にスポーツを楽しむことの重要性を語ると、ディスプレイ越しであっても木村選手の熱意が会場に伝わってきました。

Jリーグ社会連携室の鈴木順室長は、『Jリーグを使おう!』という言葉を掲げた社会連携=『シャレン!』の活動を説明。Jリーグクラブを介して行政や企業がつながり、地域の課題を解決していくことの重要性を話しました。そのなかで、ここ数年は企業の協賛対象がモノ(広告掲出など)からコト(アクティベーション)へ、そして今は共感できるプロジェクトにシフトしていっている現状を紹介。このことは今後のスポーツSDGs推進において、非常に大きなポイントになるものと思われます。

日本障がい者サッカー連盟(JIFF)からは北澤豪会長が登壇。障がいの有無や種類にかかわらず子どもたちが"まぜこぜ"でサッカーをする『JIFFインクルーシブフットボールフェスタ』では、フィールドのなかに目指すべき共生社会が実現していることを語りました。一緒にサッカーをすることで、片方の足がない選手が鋭いフェイントとドリブルでゴールに迫る姿を目の当たりにして、『障がいがあってかわいそう』という見えない壁のある印象から『すごい!』という純粋な感情に変わる。この一例からも、社会におけるダイバーシティ&インクルージョン教育の重要性を感じ取ることができます。

ここまで企業とスポーツ関係者の発言が続いていますが、行政としてはスポーツ庁がこのSDGs²スタジアム2021キックオフトークセッションに参加しています。障害者スポーツ振興室の助川隆室長から、まずはスポーツ習慣の課題についての説明があり、障がいのある成人で週に1回スポーツをする人の割合は24.9%で、障がいのない人の59.9%に比べて大きな差があるという調査結果が発表されました。ここに風穴を開けていくためには『まずやってみよう』という姿勢が重要であり、特にこの1年はコロナ禍による困難な状況下で、それを感じる機会が非常に多かったとのこと。どうやればできるかを今考えることの積み重ねが、将来の社会を変えていく原動力となることを語られていました。

東京ヴェルディ普及部の中村一昭コーチは、普段からスポーツ&SDGs普及活動の現場に立つ指導者として、障がい者スポーツ体験教室が街をつくっていく活動であると感じたエピソードを披露。以前は目の前の子どもたちにどう楽しんでもらうかを考えていたものの、長く活動を続けるなかでその5年後、10年後に同じ子どもたちと話すと、彼らは当時感じたことから障がいのある方々に対する理解を深めていて、そういった大人が増えれば街を誰にとっても住みやすい場所に変えていけると思うに至ったということでした。
さらに『ともに未来へ Green Heart Project』や『Green Heart Room』に対する熱い気持ちも語り、最後にもう一度JIFF北澤会長にバトンタッチしました。

東京ヴェルディのOBである北澤会長の『我がヴェルディがこうして先頭を切って発信をしてくれることで、自分も所属していてよかったなと思います』という力強い言葉で総括ははじまり、企業、行政、リーグ、クラブの枠を超えた連携の重要性、あらゆる人がスポーツを楽しめて不自由なく生活できる環境の確保、そういったことが世界の課題を解決していく力に変わっていくことを会場全体で改めて確認しました。

東京ヴェルディはこの『SDGs²スタジアム2021』をきっかけとして、今後も多くのパートナーとともにスポーツ&SDGs普及活動を推進していきます。

キックオフトークセッションの全内容は、下記リンク先からもご確認いただけます。

01『スポーツ界から変えていくジェンダー平等社会』
02『スポーツを通じて実現するノーマライゼーション社会』

PROFILE

SDGs²スタジアム2021キックオフトークセッション

【開催日】2021年4月20日(火)
【会場】JFAハウス ヴァーチャルスタジアム(日本サッカーミュージアム内)
【主催】東京ヴェルディ
【協力】Jリーグ
【開催目的】
 ・より多くの人が『SDGs』を知り、自分たちの目標であると感じること
 ・ともに未来へ進むパートナーの輪を、大きく強くすること
【登壇者】 ※五十音順・敬称略
 WEリーグ 理事 小林美由紀
 Jリーグ 社会連携室長 鈴木順
 スポーツ庁 障害者スポーツ振興室長 助川隆
 日本障がい者サッカー連盟 会長 北澤豪
 パラトライアスロン選手/ひまわり福祉会/Challenge Active Foundation 木村潤平(オンライン参加)
 フレスコ・キャピタル ベンチャー・パートナー 鈴木絵里子
 ヤンセンファーマ株式会社 広報リード 岸和田直美

 東京ヴェルディ 普及部/SDGsヴェルレンジャー 中村一昭
 平原依文(モデレーター)

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