色覚多様性から見える世界の色 〜パズルゲーム編〜

2021/08/17

色の見え方は人によって異なること、ご存じですか。視細胞には赤・緑・青の色覚があり、その組み合わせで数百万種類にも及ぶ色を見分けます。その色覚の機能の違いがあることを、色覚多様性と呼びます。ひと昔前までは「色弱」、「色覚異常」、「色盲」、「色覚特性」などの呼称でしたが、2017年9月以降は色覚多様性が一般的な呼称となっています。

今回の記事では、色覚多様性のゆづぱんさんが、色覚多様性への配慮で定評のある「ぷよぷよeスポーツ」をはじめ、3種類のパズルゲームの見え方をレポートします。

稀有な色覚多様性を持つレアキャラ

ゆづぱんと申します。東京生まれ東京育ちで、愛犬お二方と暮らしています。下垂体機能低下症(ACTH単独欠損症)と反復性うつ性障害を持つほか、特定不能の発達障害との診断も受けています。母方の祖父と父が色覚多様性だった私は、一型と三型を併せ持つ色覚多様性です。(これはなかなか珍しい組み合わせなのだそうです)

昔から美術の授業での会話等で漠然とした違和感はありました。しかし他人の視覚を見ることができないので、自分が色覚多様性を持つことは大人になるまで気付いてませんでした。最初に自覚したきっかけは、iPhoneのアクセシビリティモード。その後、EnChroma社の色覚多様性向けサングラスを使用した際、見えている世界の違いに感動! From the new worldでした。

私が普段見えている世界を絵で書いてみました。私の視界をさっくり言えば、ゴッホの世界。空は何色もうごめいてますし、人は目の位置がずれて見えるのが基本です。

ゆづぱん作:私の見える世界

障害が生きている(と自分では思っている)のは、なりわいとしている絵画・イラスト・マンガ・段ボールアート等のクリエイティブ部分です。(最近では、パグの張子づくりもやっています) ePARAスタッフの方が驚いていた(自分では普通だと思っている)は、寝て起きたら、目の前に自作の刺繍作品ができあがっていたこと。そんなことはよくある話です。

ゆづぱんが目覚めたときに完成していた刺繍2点

色覚多様性ゆづぱんが、有名パズルゲーム3タイトルをプレイしてみた

ゲームは月並みに愛好していて、特にシミュレーションゲームが好きです。シミュレーションゲームの黎明期は、テレビやゲームの解像度などのツールなどに左右されてかなり難関な事もありましたが、昨今のデバイスの性能やゲーム自体の解像度は日に日に前進して、見易さは格段に上がってきました。しかし、健全なマジョリティの色覚者をベースに作っているため、色覚多様性に合わせたモデルでゲームのカラーバランスを考えるのも限界があると思います。

今回はパズルゲーム(子供の時は、凄くたくさんのパズルゲームが跋扈していましたが改めてプレイ)を楽しみながら、そのカラーアクセシビリティについて考えてみました。(※1)

※1:2021年6月時点、著者の使用するプラットフォーム・バージョンの条件下でのレポートとなりますので、ご了承ください。

【1】:王道! 和やかなヒバナ、「ぷよぷよeスポーツ」(Nintendo Switch/ver2.02)

懐かしくも、常に進化系のぷよぷよについて記します。子供のときに兄弟にボコボコにされたいい思い出がありますが、改めてやってみてシンプルで良く設計されているゲームシステム。ぷよの形状や顔の表情で見分けがつくようになっている点が素晴らしいと感じています。非常に楽しくプレイできました。

が、色としては見にくい点が...。青と紫のぷよが本当に紛らわしいです。彩度を上げることによって差を出しているそうですが、逆に見辛い...。微妙なニュアンス、つまり形状で見分けられますが動体視力を問われるゲームゆえ、とっさの時にシクジリそうになります。個人的に紫を、黒とか赤紫などに変えてもらえるとすごくありがたいです。

形状で差別化されてるところで大いに識別出来るので問題ないと言えばないんですが...。いかんせん、肝心のぷよのカラーリングで苦戦するのはちょっと色覚異常のあるゲーマーには厄介です。なお、ぷよの表情でコントラストを出すという配慮は面白く、他のゲームタイトルでも活用できるアイディアだと思いました。

【2】:みんな大好き!ソロでも対戦でもおなじみ「TETRIS® 99」(Nintendo Switch/ver2.2.0)

ePARAの記事でも紹介されているテトリスです。ワクワクしながら何十年ぶりにやってみました。1人で粛々とレベルを上げるのが好きな発達傾向の私としては性に合う...。昔は、灰色っぽく見難かったのですが、今はセルがかなりネオンカラーで見易い! というか判別しやすいです。

が、長時間やっていると頭が錯覚してきます。セル自体は彩度抑えめのカラーリングの上に、形状におおじて記号のようなものが振られてるのでわかり易くはありますが、問題は周囲のUI。Switchに移行してから、プレイフィールド以外のエフェクトがコテ盛りなので、色的にも、発達障害の観点からも集中しにくい印象です。

【3】:一斉を風靡! ソシャゲのパズゲー「パズル&ドラゴンズ」(Android/ Ver.19.3.1)

テレビCMでもお馴染みのパズル&ドラゴンズ、通称パズドラ。私はこの手のソシャゲーが不慣れなのですが、意外にサクサクとプレイできました。爆発的に流行ったというのも理解できる、ストレスを感じさせないゲーム性です。

さて、肝心のパズルシーンは...というと、ぷよぷよと同じ現象です。青と紫が見辛い! さらに、パズル形状が回復以外丸いので焦るとミスが増える状態でした。パズルのセルに属性の文様があってそれで見分けがつくのですが、とっさの状態(もちろん初心者なので余裕で焦ります)で混乱してしまいます。

私のようなファーストビギナーではなく、熟練の色覚多様性ゲーマーなら話は違うと思いますが、ぷよぷよと違う意味で難しさを感じました。中の模様をより明確に区別できるようにデザイン性に頼るのもありだと思いました。

色覚多様性ゆづぱんがプレイして思ったこと

「ぷよぷよeスポーツ」、「TETRIS® 99」、「パズル&ドラゴンズ」。これらのタイトルをプレイし、色覚多様性のレアキャラとしての感想をまとめますと、以下3点です。

1:彩度に頼らないほうが嬉しい
2:長時間プレイをしたときの目の負荷が軽減されると嬉しい(モーションエフェクトなどの効果)
3:パズル以外の要素で、UIなどのカラーに調和が取れていない気がした

全体の感想としては、「ぷよぷよeスポーツ」はぷよの形状と顔の表情で差別化がされていたところがとても親切でした。「TETRIS® 99」は彩度が低く色味がはっきりして疲れにくかったこと、ピクトグラムがついていて見やすくなっていたことが良かったです。「パズル&ドラゴンズ」は、可もなく不可もない印象でした。

私のような色覚多様性を持つプレイヤーは、彩度が高すぎると逆に疲れやすかったりするため、色のみに頼らず他の要素で表現を配慮してもらえると助かります。このセオリーは、色覚多様性だけでなく弱視の方にも通じる点があると思います。セル自体の拡大機能などもあったら良いなぁとワガママを言いつつ、ゲーム精度の向上と、人間のハンディの埋め合わせがもっと親和性を深められたら素敵な世界が生まれるなぁと感じるゆづぱんでした。

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