車いすで立ち飲みも!──程よい気遣いが心地いい"親身な"イタリアンレストランに潜入

2018/09/27

ハイスペックな設備がなくても、気持ちひとつでそこはバリアフリーに。東京・新宿のとあるビルの地下2階で、18年にわたって愛されているイタリアンレストラン「イル・バーカロ」。そこはまさに、障害のある方に親身に寄り添う、こころのバリアフリーを感じるお店。車いすユーザーのヤフー社員・古賀が行ってきました。

「大好きなヴェネチア料理でみんなに幸せになってもらいたい。ただそれだけなんです。」(イル・バーカロ支配人の有田さん)

車いすの常連さんもいるとのウワサを聞きつけて、やってきました!

イル・バーカロの入口

ここがウワサの「イル・バーカロ」。ヴェネツィアの料理や雰囲気をそのままに再現したバーカロ=居酒屋だ。入口にある立ち飲みカウンターでは気軽に一杯、その奥に広がるテーブル席ではゆったりと食事を楽しむことができるとあって、近所で働くサラリーマンやOL、近くの百貨店を訪れた人に支持されている。

ヤフー古賀:こんにちは〜! ヤフーの古賀といいます。こちらのお店には、車いすのお客さまがよく訪れているというウワサを聞いたのですが、本当ですか?

有田さん:いらっしゃいませ! イル・バーカロの支配人、有田と申します。はい、車いすでご来店の常連さんはいますよ。どうぞどうぞ、中にお入りくださいませ!

「ふつ〜です」と支配人は言うけど、なんだか居心地がいい店内。

笑顔で迎え入れてくださった、有田支配人。広々とした店内は、立ち飲みスペースとテーブルスペースに分かれていて、床は段差がなくフラット。テーブルは比較的自由にレイアウト可能で、車いすが通るスペースも確保できそう。そして何だかわからないけれど、不思議と居心地のいいお店。

有田さん:実は、車いすの方がご来店されても特別なことは何もしていないんですよ。そういう意味では、至って普通のお店です。何をしているかと聞かれても、車いすのお客さまとほかのお客さまが快適に過ごせるように考えたり、ご要望に対してできる限りのお手伝いをしているだけです。

イル・バーカロの店内

ヤフー古賀:お〜、結構広々としていますね。段差がないので車いすでも快適です。ちなみに、多目的トイレはありますか? トイレの設備は私たちが気になるポイントの一つなんです。

有田さん:はい、ビルの1階に一つございます。本当は各階に設置していればお客さまも便利だとは思うのですが、ビルの設備を変更するのはそう簡単ではないようですね。

立ち飲みスペースも気がねなく満喫。有田支配人の心地いい距離感。

イル・バーカロには立ち飲みスペースがある。目の前の並べられた前菜(100円〜)を軽くつまみながら、グラスワイン(250円)などで気軽に一杯! を楽しめる場所。前菜もドリンクも、テーブル席よりリーズナブルに楽しめるとあって人気のスペースだ。

ヤフー古賀:ワイン、いただきます〜! おっ、このカウンターは、ボクにとってちょうどいい高さですね。立ち飲みスペースのテーブルは、ちょっと高すぎる場合が多いんです。

"ちょうどいい"高さのカウンターを挟んで、なごやかに談笑する有田支配人とヤフー古賀

有田さん:お食事をしたり、一緒に来られた方とワイワイ楽しむなら、低めのテーブルもお出しできますよ。少々お待ちくださいね。 (よいっしょ、っと)

店内で歓談する様子

ヤフー古賀:ありがとうございます〜。うん、この低めのテーブルなら、みんなと一緒に立ち飲みスペースで気兼ねなく食事できる! 車いすは人によって高さが違うけど、例えば背の低い女性でもこれなら大丈夫そうですね。

有田さん:ご意見、ありがとうございます。確かにそうですね!

ヤフー古賀:ボクの場合、車いすだからといって周囲の人に特別扱いをされるのが少し苦手なんです。でも、有田支配人のさりげない雰囲気は、すごく心地いいですね。オープン当初からこういった臨機応変な対応をされてきたのですか?

有田さん:はい。私が入社した10年以上前から先輩たちが当たり前のように接客していたので、もともとそういった考えが根づいていたのでしょうね。どんなお客さまにも料理やドリンクをはじめ、この空間の全てを100%お楽しみいただいて、満足して帰ってほしいだけなんです。

ヤフー古賀:正直、車いすで食事にでかけるのはおっくうなんですよ...。もちろんアクセスしにくいという問題もあるのですが、食事や仲間との時間を楽しみたいのに、まわりに気を遣わせているんじゃないかと気になって、逆に疲れちゃったりして。

有田さん:そういうご意見は参考になります。当店には車いすのお客さまはもちろん、視覚や聴覚に障害のある常連さんもいます。そういったお客さまと接してきた中で感じたことですが、過度に気を遣いすぎるのもどうかと思っています。
当店はバーカロ=居酒屋で、食事やドリンクとともに、ご友人やご家族との大切な時間を楽しんでいただく場所です。そんなとき、特別扱いをしてほしくないと思う方が多いのではないかと感じます。
ですので、店内へとご案内する際も、周りをちょっと注意して見ているくらいのレベルです。お客さまが求めていらっしゃることに対して、できることをできる限り全力でお手伝いしたいという気持ちでいます。

車椅子で入店する様子

ヤフー古賀:ボクの場合は、それくらいの距離感が心地いいです。

有田さん:感じ方は人それぞれですので、マニュアル的な対応はできないんですよね。距離感の取り方は本当に難しいと感じていまして、いつも試行錯誤しながらお店に立っています。

店内で歓談する様子

スタッフみんながウェルカムな対応。本気で常連になりたい...!

お話を伺いながら周囲にぐるりと目を運ぶと、イタリア直送のインテリアや照明が配されていて、まるで旅行に来ているような気分。料理にもイタリア直送の食材がふんだんに使われていて、中でも人気なのは「リングイネ 手長海老のソース(1,640円)」。ヴェネツィアで400年以上続く名店バーカロで修業を重ねたシェフの料理は格別!

ヤフー古賀:ちなみに...車いすの友人とゾロゾロとおじゃましても大丈夫でしょうか?

有田さん:もちろんウェルカムです! 立ち飲みスペースは人気がありますので、大人数だとご案内が難しいかもしれませんが、テーブル席に空きがあればすぐにご案内できます。事前にお席をご予約いただければ、あらかじめ空間を広めに取っておくこともできますよ。イタリアのワイナリーから直送したワインと、シェフ自慢の料理をお召し上がりいただきたいです。

ヤフー古賀:どんなにお料理がおいしいとわかっても、いざ行ってみると「車いすの人が来たな〜」という反応を感じたりするんですよね。

有田さん:そうなんですか? 当店のスタッフに特にこれといった教育はしていませんが、社長を筆頭に「どんな人にも同じようにお楽しみいただきたい」という雰囲気ができあがっているように思います。
ちなみに、こちらは当店のイケメン担当です(笑)。彼をはじめ、スタッフ全員が、どんな方でも何度もご来店いただけるようなお店にしたいと思っています。

イル・バーカロのシェフの写真

有田さん:障害のある方も障害のない方も、同じお客さまです。料理とドリンクと心のこもった接客で、お客さま全員を笑顔にしたいですね。そして、そのお客さまの幸せを少しでもお手伝いできたということが、私たちの日々の喜びでもあります。 ぜひ、気軽にお越しくださるとうれしいです!

イル・バーカロ支の料理

PROFILE

IL Bacaro(イル・バーカロ)

住所:東京都新宿区新宿3-4-8 京王フレンテ新宿三丁目B2F
TEL:03-5269-8528
URL:https://ilbacaro.gorp.jp/
エレベーター:あり
入り口段差:なし(地下通路からの入る場合は6段の階段あり)
入り口幅:150 cm(カウンターエリアからレストランエリアへの幅は115cm)
店内段差:なし
多目的トイレ:あり
車いす用駐車場:なし

関連記事

記事をもっと見る