コトナルでは、パラスポーツや障害者の環境をポジティブに変えていくアクションを紹介しながら、みんなができるアクションも呼びかけている。自分ができることを、まずはやってみる。今回、やってみる男DOマンこと、コトナル編集長がやってきたのは、江東区にある特別支援学校の体育館。フロアホッケーの練習にWWEのスーパースターが参加するという情報を聞きつけ、「オレも!」と手を挙げた。
もう1つの4年に1度のスポーツの祭典、「スペシャルオリンピックス」。
オレの名前は、DOマン(ドゥーマン)。普段は、コトナルの編集長をしているサラリーマンだ。コトナルで呼びかけているアクションを自ら実践すべく、スペシャルオリンピックス日本・東京のフロアホッケープログラム「Tokyo Winter Challengers」の練習にやってきた。
スペシャルオリンピックスってなんだ? フロアホッケーってどんなスポーツ? なぜWWEのスーパースターがここにやってくるのか? 聞きたいことが山程があるが、まずは自分が体験する! 当日のレポートとともに振り返っていきたい。
DOマン:こんにちは、DOマンです。
上村コーチ:どもども。スペシャルオリンピックス日本・東京のフロアホッケープログラム「Tokyo Winter Challengers」のコーチをしています、上村光男です。
SON渡辺さん:こんにちは。スペシャルオリンピックス日本(SON)の渡辺紀明です。ようこそ。
DOマン:ホッケー経験はゼロですし、最近は運動不足で練習についていけるか心配ですが......今日はよろしくお願いします!
SON渡辺さん:フロアホッケーは、知的障害のある人が参加する国際的なスポーツ組織「スペシャルオリンピックス」の競技種目として生まれました。最近は、障害のある人もない人も一緒にプレイを楽しめる、ユニファイドスポーツのカタチとしても広がってきているんですよ。
上村コーチ:「Tokyo Winter Challengers」の練習でも、知的障害のあるアスリートだけでなく、その家族やアイスホッケー経験者など、いろんな人がフロアホッケーを楽しんでいます。
SON渡辺さん:スポーツって、子どもの頃からずっと「勝つこと」重視じゃなかったですか? 僕もサッカーを本格的にやってきたので、ずっと勝つことだけを目指していました。でも、スペシャルオリンピックスに携わるようになって「スポーツって勝つことだけじゃなく、やっていてすごく楽しいんだ!」ってことに気づいたんです。
上村コーチ:きっと、ゲームが終わるころには、知的障害のあるアスリートに対するイメージが変わるんじゃないかな。ボクはコーチをはじめて10年くらいですが、アスリートたちも成長して、今では全力でプレイしても敵わないですから。
SON渡辺さん:「Tokyo Winter Challengers」には、スペシャルオリンピックス冬季世界大会の日本選手団に選ばれたアスリートもいますしね。
上村コーチ:じゃ、WWEのスーパースター、アスカさんとカイリ・セインさんが来てくれる前に軽く練習しておきましょう! はい、ランニング!
上村コーチ:じゃ、スティックを持ってみましょうか。
DOマン:去年もWWEのスーパースターが練習に来たんですよね?
上村コーチ:そうそう。WWEとスペシャルオリンピックスの国際本部が、パートナーシップを結んでいて。以前は来日公演に招待してもらっていたんだけど、去年からボクらのプログラムに参加してもらっているんですよ。じゃ、DOマンも交えて、ゲームをしてみようか。
上村コーチ:はい、終了! WWEのアスカさんとカイリ・セインさんが、いらっしゃいましたよ〜! みんなで出迎えましょう!!
手加減なし! アスカ&カイリ・セインがフロアホッケーで大暴れ!
アスカさん:WWEのアスカです! 今日はよろしくお願いします〜!
カイリ・セインさん:カイリ・セインです! みんなと一緒にフロアホッケーができるのを楽しみにしてきました〜!
上村コーチ:今日は、アスカチームが赤、カイリチームが青に分かれてゲームをします。じゃ、ユニフォームを着てさっそく練習スタート!
上村コーチ:では、ゲームをはじめますよ〜!
DOマン:うぉ〜〜〜〜〜〜!
アスカさん:試合がこんなにハードやと思わなかった(笑)! でも本当に楽しかったです。「重心を下ろして」とか、試合中たくさんアスリートの方からアドバイスをいただいて、それを試してみたらゴールを決められました!
カイリ・セインさん:WWEの試合よりハードかも! と思いました(笑)。フロアホッケーは、見たこともやったこともなかったのですが、想像していた何倍も動き回る、激しいハードな競技でした(笑)。最後は白熱した試合もできて楽しかったです!
アスカさん:最後は負けましたけど(笑)本当に楽しかった。またぜひ呼んでほしいです!
「自分が自分の一番の応援団」だと教えてくれる、スーパースターの存在。
スーパースターとのゲームで盛り上がった、フロアホッケーの練習会。今回のスペシャルオリンピックス日本とWWEとのコラボ練習会を企画した、WWE Japan広報の清原彩さんにも話を聞いてみた。
DOマン:今日はありがとうございました!
WWE清原さん:おつかれさまでした。WWE Japan広報の清原です。DOマン、大丈夫でした?
DOマン:いや、DOマン史上一番ハードでした(笑)。今日は、アスカさん、カイリ・セインさんという、世界的なスーパースターが参加されて、フロアホッケーのアスリートたちの士気も上がったように感じましたね。
WWE清原さん:彼女たちも今日を楽しみにしていましたし、逆に彼女たちも元気や勇気をもらっているんですよ。WWEのスーパースターたちは、社会貢献できることを誇りに思っているんです。
DOマン:WWEは社会貢献活動を活発に行われていますよね。
WWE清原さん:もともとWWEの本社アメリカが積極的で、2008年設立のWWE Japanでも、規模は小さいながら主に子どもたちや東日本大震災復興支援などを行ってきました。
DOマン:今日のプレイもそうですが、WWEの日本公演も見させてもらって、スーパースターの鍛えられた肉体とパフォーマンスから、勇気や元気をもらいました。
WWE清原さん:WWEのスーパースターは、精神的にも肉体的にもタフに見えますよね。でも、そこに至るまでには、大きな努力や葛藤を克服した経験があります。「どんなときも、自分が自分の一番の応援団だ」ってことを、WWEのスーパースターは身をもって教えてくれているんですよね。
DOマン:つらいときも苦しいときも、自分が自分を応援することで、強くなれる。すごく勇気をもらえる言葉ですね。今日は、お二人のパワーに圧倒されるとともに、「Tokyo Winter Challengers」のアスリートにも、そんな強さを感じました。障害があるかどうかもすっかり忘れて、本気でプレイして、本気で楽しんで。
WWE清原さん:一緒にスポーツをしたりして触れあうと自然と親しみがわいて、いつの間にか近しい存在になれることが多いですよね。WWEとしても、できる限りそんな役割に貢献していきたいと思っています。
DOマン:DOマンも、がんばります!
DOマンの学び
──障害者=守るべき弱者、と思い込んでいないか?
フロアホッケーの練習に参加してから数日、いまだ続く筋肉痛を感じながら、フロアホッケーに白熱した時間を振り返ってみる。正直に言うと、参加する前は、知的障害のある人のために開発されたフロアホッケーに対して、そして知的障害のある「Tokyo Winter Challengers」のアスリートたちと一緒にプレイすることに対して、少し身構えていたような気がする。でも、ゲームがスタートすれば、必死に走って、全力で守って、夢中になってプレイを楽しんでいた。障害者と健常者が区別なく一緒にプレイする、ユニファイドスポーツのスタイルで楽しめたことが、おもしろさの理由の1つかもしれない。でも一番の理由は、練習と挑戦を積み重ねてきた「Tokyo Winter Challengers」のアスリートが、自分らしく、パワフルで、圧倒的だったからだと思う。
障害のある人がスポーツをする機会や場所が少ないと聞く。特に知的障害のある人がスポーツをする場は極端に少なく、「スペシャルオリンピックス」という世界的な組織や競技会も、その機会を増やすためにつくられた。障害者=「弱者」、「守るべき存在」というステレオタイプな捉え方が、みんながチャレンジする場や機会を無意識に奪っているのかもしれない。障害のある人と健常者が一緒にプレイするユニファイドスポーツ体験が、障害のある人がチャレンジする場をつくるとともに、自分たちのなかにある見えない壁も取り払ってくれると感じた。