バリアフリープロジェクトチームFortia(フォルティア)のメンバーで、筋ジストロフィーベッカー型の当事者であるとりちゃんが、ePARA発のeサッカーユニット「ePARAユナイテッド」のキャプテンに就任しました。
ePARAユナイテッドは障害当事者がeサッカープレイヤーとして躍動するユニットで、SEASON1は全員が日常生活で車椅子を使用する「車椅子eサッカーチーム」です。2022年5月28日(日)開催のePARA CARNIVALが初舞台となります。
とりちゃんは、ePARAユナイテッドの発足にあたってメンバー招集・企画・練習環境整備を行うとともに、自身も車椅子eスポーツプレイヤーとして練習に励んでいます。そんなePARAユナイテッドの要であるとりちゃんに、ePARA編集局チーフライター彼岸花がお話を伺いました。
病とともに歩む心強きバリアフリーeスポーツプレイヤー、筋肉への憧憬
──本日はよろしくお願いします。まず、とりちゃんの病気に関して伺いたいです。
とりちゃん:私は筋ジストロフィーという難病を持っていまして、難病当事者の活動家YouTuberとしてYouTubeチャンネル「とりすま」で、難病や障害に関する情報発信をしています。難病や障害のある方へのインタビューや、僕がチャレンジする企画をアップしています。ePARAユナイテッドの話も、これからどんどん動画にしていきたいと思っています。
あとは難病のコミュニティもやっていって、『とりすま座談会』というオンライン座談会を2019年11月から延べ100回近く開催しており、参加者でいうと1000人以上参加いただいています。ハウスメーカーに勤めながら活動をしておりまして、実績としては、テレビ東京「生きるを伝える」に出演したり、2020年の東京パラリンピックの聖火ランナーになったりもしました。
──難病がありながらも活動的ですごいですね!
とりちゃん:病気と闘うとか思っていないんです。どうせ治らないし、自分の中の一部やペットみたいな感じです。ナルトの九尾みたいな感じで、最初は憎むべき相手だったんですけど、受け入れて友達にして力になるようなイメージです。
(とりちゃんがよくイベントで着用する)筋肉のマーシャル・ロウあるじゃないですか。やはり筋ジスという筋肉の難病だから、スポーツは別にできなくてもいいやという部分もあるんですが、筋肉への憧憬というものはやっぱり常に持っているんだなと思っています。ゲームの世界だからこそ筋肉への憧憬が具現化できる場かなと。サッカー選手でいうと僕はメッシよりもロナウド派なんですよ、ムキムキだから。あとで気づいたのですが、鉄拳7のマーシャル・ロウもムキムキだからというのもあるのかなと。
ゲームとの出会い、やり込んだ理由とは
──ePARA2019初代王者に輝き、バリアフリーeスポーツプレイヤーとしての活躍も素晴らしいですが、その原風景にあるものだとか、ゲームのエピソードを伺っても良いですか?
とりちゃん:小学生の頃にファミコンのマリオをやった記憶があります。ゲーム機は最初にゲームボーイを買ってもらってポケモンなどをやっていて、そのあとがNintendo64です。スターフォックス64を最初に買ってもらって、スーパーマリオやサッカーゲームもやってたりしていました。あとはスマブラだとか今流行ってるゲームの一番最初の作品をみんなでワイワイしながらやったりというのが思い出ですかね。
──格ゲーもサッカーゲームも、その頃からいろいろやられていたんですね。
とりちゃん:そうですね、スポーツって何か頑張れば報われるって言われるのですが、筋肉の難病なので、スポーツで報われなかった経験というのがいっぱいあったんです。でも、ドラクエとかファイナルファンタジーとかのRPGもそうですが、ゲームなら頑張った分だけ強くなるじゃないですか。勉強もそうで、やった分が報われるというのがすごく好きで、けっこう頑張っていました。
──FF14プレイヤーなのでわかります! コツコツが報われますよね。
eサッカーチーム、「ePARAユナイテッド」始動!
──とりちゃんがキャプテンを務めるePARA初のeサッカーチーム「ePARAユナイテッド」について教えていただけますか。難病や障害のある車椅子のメンバー11名が集まってeサッカーゲームをするなんてエキサイティングですよね。
とりちゃん:あえて走ることができない、車椅子メンバーが11人並んでフィールドの中でみんなで走り回る。しかも男女関係なく。なんて、めちゃくちゃ面白いんじゃないかな? と思うんです。リアルだと絶対できない。車椅子では走れないという点でも、男女混合という点でもそうです。スポーツに一度は裏切られた経験があるであろう11人が集まるというコンセプト自体が、おもしろいと思うんです。
その点、今難しいことは、障害や難病があってチームスポーツの経験があまりないメンバーが多いことです。「一緒にやって面白そうだな」と思うメンバーをゲームの経験やサッカーの経験の有無に関わらず集めたので、ただでさえ連携が必要な難しいスポーツをみんなでやるのが大変です。
ゲームの操作自体は使うボタンや同時押しなども減って簡単にはなりますが、1人が1人を操作となるので、連携面などサッカーの理解が必要でその点では難しくなる。でもこれはチャレンジングで難しい部分であり、面白い部分でもあるのかなと思っています。一度僕が動画まで作ってオフサイド講座をやったりもしていて、ルールや戦術などをみんなで勉強するところからの挑戦となり、とても楽しみです。
プレイ環境がないメンバーも多かったというのはけっこう高いハードルだったんですが、そこはサイコム社のご協力でプレイ環境を整えてもらい、めちゃくちゃありがたいです。みんなでゲームの中で自由に走り回れる感覚は何事にも代えがたいですね。
──とてもよくわかります! ゲームをするにあたって障害や病気に合わせた工夫は必要かもしれませんが、あの世界に入ってしまえば自由に動き回れますよね。
スポーツに裏切られてしまったとしても
──病気のせいでスポーツでは活躍できなかった過去があってもバリアフリーeスポーツでならば羽ばたけるんですね。
とりちゃん:僕自身サッカーをやりたくてもできなくて、途中で諦めざるを得なかった過去があります。小学生の頃サッカーチームに入っていたんですが、筋ジストロフィーの影響ですぐ足が痛くなってしまうんです。でも病気だとはわからなかったので、わがままで忍耐力のない子だと思われてしまい、当時のコーチに「なに文句ばっかり言ってんだ。帰れ。」と怒鳴られたんです。そしてそのまま帰ってサッカーをやめてしまいました。
頑張って足が速くならないかなと思い、早朝に校庭を走ったりしましたが全然速くならなかった思い出もあります。なので、サッカーにもスポーツにも、やりきれなかったという思いがあって。要はチームに迷惑かけたくないから個人スポーツで、しかもあまり走らないスポーツばかりやって、サッカーを避けてしまう部分があったんです。
だからこそ今回、ePARAユナイテッドでサッカーをやれるという機会がとても楽しみです。
個人レベルでのストーリーも出していけたら面白そうと思っていますし、ゲームへのチャレンジと一緒にバリアフリーeスポーツをやるにあたって参考になるようなことも発信していきたいです。コントローラーがうまく握れない人や、手に麻痺があったり筋肉の握力がなかったりという問題を抱えていて片手でプレーしている人もいるので、その工夫や挑戦をシェアしたいなと。アケコンでサッカーゲームをやってみるなど、そういうチャレンジを僕自身がいろいろやってみるというのも一つですね。
いろいろなメンバーがいるからこそそれぞれが違う入力方法でやってみて発信し、これからサッカーゲームにチャレンジしようっていう人が増えていくといいですね。
──何か具体的な目標はありますか?
具体的な目標は、「有吉ぃぃeeeee!」への出演です。「有吉ぃぃeeeee!」では有吉さん率いる「有吉JAPAN」が、プロチームや高校生チームなどを相手に「FIFA22」をプレイする企画があります。それにePARAユナイテッドの11人で出たいという思いがあります。
あとは、チームとしてサッカーやeスポーツのイベントに呼ばれたら面白いかもしれません。プロのサッカーチームとも対戦できたらいいな、というのもあります。2022年は難しいと思うんですが、ワールドカップに付随してサッカーのeスポーツイベントもどこかでやっていそうなので、そういうイベントにも、2026年あたりに呼ばれたいというのが大きな目標です。
──素晴らしい! 心より応援しています!
最後に
ePARAユナイテッドのキャプテンとりちゃんから、とても素晴らしい話やこれからの希望をたくさん聞くことができました。病気と手を繋いで仲良くし、そして前向きに歩んでいく姿に感動すらあったインタビューでした。ePARAユナイテッドの今後の活躍が楽しみです。
本インタビューの様子は、YouTubeチャンネル「とりすま」でも公開されています。こちらもご覧ください。