コロナ禍で進む"コミュニケーション"のバリアフリー。注目のプロダクト2選

2020/12/08

すでに私たちの生活の一部分となっているマスク。新しい素材や機能、多様なデザインの商品が次々と登場しているが、「口元が隠れないマスク」がスタンダードのひとつとなりつつあることをご存知だろうか。

聴覚障害のある夫婦が仕立てる、「口の動きが分かる」マスク

欧州や米国に比べ、大きく報道されるケースが少ないものの、感染者数が急増している東南アジア諸国。なかでもインドネシアは感染者数が約15,000人、死者数が1,000人を上回っている。

スラウェジ島のマカッサル在住のBadaruddin夫妻は元々、仕立て屋としてクッションやシーツ、カーテンなどを製作していたが、ロックダウン以降、貧しい人向けにマスクの縫製に取り掛かり始めた。聴覚障害を抱える2人が作っているのは自身と同じように耳が聞こえない人々、補聴器を使用している人も使える、口元がシースルー状になったもの。1日あたり約2ダースのマスクを生産し、1個10,000~15,000インドネシアルピー(約72~108円)で販売している。

「ある日、マスクをつけた人に話しかけられたのですが、私たち夫婦には聴覚障害があり、唇の動きを読まないと何を話しているのか分からないのです。だから私は自分自身のためのマスクを作ろうと思いました。耳が聴こえる人もそうでない人も着用できるマスクですから、人が話していることも理解できるし、耳が聴こえない人もコミュニケーションの機会を損なうことがありません」と妻のFaizah さんは語っている。

聴こえない不自由を知る当事者だからこそのアイデアとも言える透明マスクは、手話通訳者が着用していることで、昨今テレビニュースや動画サイトでも目にすることが増えた。障害によるコミュニケーションの齟齬を解消するデバイスやプロダクトの台頭が、バリアフリーに対する私たちの意識と理解を少しずつ変えてくれることは間違いないだろう。

次に紹介する「Dot Watch」も、障害によるコミュニケーションの困りごとを解決するプロダクトのひとつだ。視覚障害を抱える人の情報アクセスを、より簡単にしてくれるものである。

着信もテキストメッセージも「点字」でお知らせする、新世代スマートウォッチ

韓国のスタートアップDotによる「Dot Watch」は、世界初の試みとなる情報を点字で表示してくれるスマートウォッチ。スマートフォンとBluetoothで接続し、着信やアラーム、スケジュールやメッセージなどの情報を文字盤に浮かび上がる点字から確認することができる。1回につき4文字表示され、クリアするタイミングは自分で調整が可能。

また、点字学習プログラムが内蔵されているため、デバイスの利用開始時には点字が完璧に理解できていなくても問題ないというのが嬉しいポイント。目が見える、見えないに関わらず、点字ってなんだか難しそう...と抱いていた先入観が払しょくできるかもしれない。

デバイスはわずか60グラムと非常に軽量で、防水&防塵加工も施されており、充電も1週間に1度でOK。アプリは9言語に対応、自動アップデートされるなど手に取るハードルがとことん低く設定されているところも非常に魅力的なアイテムだ。

障害の有無やバックグラウンドに関わらず、誰もが意思疎通を阻害されない世界を目指して、このようなプロダクトがどんどん生まれることに期待したい。

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