パラスポーツと音楽の融合!──ParaFes 2018で自分を解き放て! 担当者スペシャル座談会

2018/11/09

パラスポーツと音楽を融合させた新感覚フェス「ParaFes 2018」(主催:日本財団パラリンピックサポートセンター)が、11月23日(金・祝)にいよいよ開催される。3回目となる今年は東京2020パランピック競技大会で車いすバスケットボールの競技会場にもなる「武蔵野の森総合スポーツプラザ メインアリーナ」で開催される。今年のテーマは「真剣勝負!」というが、果たしてその内容は? また、新たな取り組みとして、パラスポーツ体験イベント「i enjoy ! パラスポーツパークin ParaFes 2018」(共催:武蔵野の森総合スポーツプラザ)も同時開催。本番に向け早くもボルテージが上がりっぱなしの担当者3名に、イベントにかける意気込みを聞いてみた!

ParaFes 2018を担当する今林さん(左)、影山さん(中)、山口さん(右)

超人たちのパフォーマンスを、かっこよく伝えたい!

東京パラリンピックに向け、パラスポーツやパラアスリートへの関心が高まりつつある。そんな中、行われることになる今年のパラフェスは、過去2回とどう違うのか。

―まずは、自己紹介をお願いします。

影山さん:パラフェスのプロジェクトリーダー、影山範子です。最近、パラスポーツのボッチャにはまっていて、友人と一緒にボールセットを購入しようと計画中です!

山口さん:山口雄介です。日本財団パラリンピックサポートセンター(以下、パラサポ)設立時からのメンバーで、パラフェスも3回目。今回は無料イベントを行うサブアリーナの統括担当をしています。

今林さん:サブアリーナで行うパラスポーツ体験イベント「i enjoy ! パラスポーツパークin ParaFes 2018」(以下、パラスポーツパーク)を担当する今林優一郎です。普段は「あすチャレ! 運動会」なども担当していて、秋は大忙しです。

―パラフェスとは、どんなイベントですか?

山口さん:ひと言で表すと、「超人たちによるスポーツと音楽の祭典」です。私たちの考える超人とは、障害の有無に関わらず、「自分の持つ可能性を最大限に開放し、オンリーワンの輝きを放つ、卓越した人間」です。私たちには東京パラリンピックの試合会場を満員にしたいという大きな目標があるのですが、そのためにも、まずは超人であるパラアスリートのすばらしさや競技のおもしろさを、より多くの方に知っていただきたい。そのきっかけになればと始めたのが、このパラフェスなんです!

パラサポ設立時からのメンバーの山口雄介さん。無料イベントを行うサブアリーナの統括を担当する。

今林さん:音楽の世界にも超人はたくさんいるんですよ。

影山さん:音楽とスポーツを融合させることで、パラスポーツを知らない方たちにも興味を持ってもらえたらと、パラフェスでは障害のあるアーティストを中心とした「UNLOCK LIVE」と、健常のアーティストによる「SPECIAL LIVE」も行っています。

―3回目となる今年の見どころは?

影山さん:なんといっても、オリンピックのメダリストとパラアスリートによる「真剣勝負」のデモンストレーションです! 東京パラリンピックから新採用のテコンドーと卓球、そしてフェンシング、この3競技の選手を招いて、舞台上で真剣に試合をしてもらいます。もちろん、演出や仕込みはなし! ですから、私たちもどちらが勝つか、正直分かりません。でも、真剣勝負だからこその迫力や感動は必ず伝わると思っています。

山口さん:これ、パラスポーツが浸透してきたからこそできる、まさに今年ならではの企画なんだよね。

影山さん:はい。昨年までは、まだパラスポーツが広く知られていなかったため、アスリートやパラスポーツならではの用具についてインタビュー形式で丁寧にお伝えするようにしていたんです。でも今年はシンプルに「かっこいい!」「すごい!」と感じてほしいんです。競技の魅力が120%伝わるクールな演出も考えていますよ。

パラフェスのプロジェクトリーダーを務める影山範子さん

今林さん:そうそう、観客の皆さんにも自由に何かを感じ取っていただけたらうれしいですね。

山口さん:コンサートもますますパワーアップしますよ。障害のあるアーティストによる「UNLOCK LIVE」では、昨年反響が高かった全盲のピアニスト兼シンガーの木下航志さんと、両腕がないピアニストにしてギタリストのジョナタ・バストスさんが今年も出演してくれます。

今林さん:木下さんによる「ブラインドコンサート」では、観客はアイマスクを着け、会場の照明も落とした中で演奏を聴いていただくのですが、一昨年も昨年も大好評でした。もちろん僕も会場で体験したのですが、普段、音楽を「聴く」と言いながら、実際は「見て」いたことに気づかされました。目を閉じているからこそ胸にずしんと響くものもあり、あの感動はいまだに忘れられません......。

サブアリーナで開催される「パラスポーツパーク」を担当する今林優一郎さん

影山さん:さらに、今年は全盲の小学生ドラマーとして注目を浴びている酒井響希くんも登場します。響希くんの目標は、障害に関係なく「世界中の人に勇気と希望を届けるドラマーになること」。その姿勢も、私たちの「障害の有無に関係なく、何かに真剣に取り組んでいる人は、人の心を震わせる」という想いと一致していて、だからこそ出演をお願いしました。

山口さん:今年の出演者数は、過去最多になる予定です。ぜひご期待ください!

人気のパラスポーツとセミナー、講演が一堂に!

今年は新たな試みとして、パラスポーツ体験イベントも同時開催する。そもそもパラサポでは体験を重視し、イベントを全国で開催しているが、その背景とは?

―メインアリーナでパラフェスを行うわけですが、その隣のサブアリーナでは、パラスポーツパークを開催するんですよね。こちらはどんなイベントですか?

山口さん:パラスポーツパークは、パラスポーツの体験型イベントとしてパラサポが全国で展開し、ご好評いただいているコンテンツです。武蔵野の森総合スポーツプラザから、「パラフェスと同時にパラスポーツに関するイベントもできないか」とお声がけいただいたことをきっかけに、共催での開催が決まりました。

サブアリーナの統括担当として、交渉、調整、準備に奔走されている山口さん

今林さん:パラスポーツパークでは、視覚障害者柔道、パラ卓球、車いすバスケットボールとボッチャ、パラ・パワーリフティング、そして陸上競技用車いすであるレーサー体験を加えた計6種目を実施します。

山口さん:どれも体験イベントでは1~2位を争うほど人気がある種目なんですよ。

今林さん:車いすバスケットボールと陸上競技用車いすのレーサー体験は、パラリンピアンの直接指導を受けられる絶好のチャンスです。子どもから大人まで誰でも楽しめる競技体験ばかりですので、気軽に立ち寄っていただけたらと。会場内の配置や体験時間なども工夫したので、全種目制覇を目指してみてください!

影山さん:さらに、パラフェス特別バージョンとして、同じ会場内にステージエリアを設け、「あすチャレ!Academy」というダイバーシティセミナーと、「パラスポーツメッセンジャー講演」も行います。サブアリーナに来ていただければ、パラスポーツを「見る・知る・体験する」が一度に、しかも無料で体験できちゃうわけです。パラサポとしても、ここまで盛りだくさんなイベントはなかなか行っていないので、この機会にぜひ遊びに来てくださいね。

―パラスポーツパークにどんな期待を込めていますか?

影山さん:障害のある方の中には、まだパラスポーツに出会っていないという方や、知っているけどなかなか一歩を踏み出せていないという方がたくさんいると思うんです。このイベントを通じて、障害のある方たちにはパラスポーツを始めるきっかけにしていただきたいです。

プロジェクトリーダーとして、常に前向きにチームを牽引する影山さん。本番が刻々と迫る中、ロケハンでは笑顔がこぼれる

山口さん:パラスポーツは「障害者のための特別なスポーツ」ではありません。障害の有無に関わらず、だれもが楽しめるスポーツの一分野なんです。体験すれば、それが分かっていただけると思います。実際、僕と今林は、パラサポ職員の仲間とゴールボールの練習をしていて、試合に出たりもしているんですよ。

影山さん:それ、分かります。私もボッチャにはまっていますから。もともとみんなでわいわい何かを楽しむことが好きなのですが、ボッチャは、ダーツやビリヤードのようにお酒を飲みながら楽しむ「大人のスポーツ」としても絶対にウケると思っています。今はパラフェスに全力投球中ですが、終わったら、「ビリヤードバー」ならぬ「ボッチャバー」をやってみたいと密かに企んでいます。

山口さん:それも楽しそうだよね(笑)。パラスポーツを体験したり、知らなかったことを知ったりすることで、他人事として考えていたことを自分のこととして考えるきっかけにもなると、さらにいいですよね。

今林さん:体験イベントは競技の魅力が一番ストレートに伝わる機会だと思っていますが、競技会場に足を運んだり、パラアスリートのSNSをフォローしたりといった次のアクションにつながるきっかけになるなら、正直、今回のような体験イベントでも講演でも、読み物でもなんでもいいと僕は思っているんですよ。そうした何かをきっかけに競技やパラアスリートの魅力を知ってもらい、最終的には、東京パラリンピックで選手たちに一緒に声援を送れるといいですね。

パラスポーツの魅力とパラフェスが目指す姿

パラスポーツの魅力を語る3名の語り口は、自然と熱を帯びていく。では、いつからパラスポーツに親しんでいるのだろうか。また、パラフェスの目指すところとは?

―皆さん、パラスポーツに魅了されているようですが、もともと詳しかったのですか?

影山さん、山口さん、今林さん:全然。。。

山口さん:お恥ずかしい話、入職前はパラスポーツという言葉さえ知らなかったんです。でも、実際に色々なパラスポーツの大会を見に行ったり、選手にお会いして話をしてみると、アスリートとして真剣に取り組んでいることが分かって。僕はもともとマリンスポーツをしていたのですが、それとはまったくレベルが違う。「そこまで追い込むのか!」と衝撃を受けました。尊敬すべき本物のアスリートたちに会えて、そのすごさを日々実感できる。つくづく幸せな職場だと思います。

今林さん:僕は大学までサッカーをしていたこともあり、パラサポに入職する前に、CPサッカー(脳性まひ7人制サッカー)日本代表合宿でコーチの補助で練習に参加したことがあるんです。日本代表の選手たちは本当にうまいので、障害のことは忘れて、こちらもムキになって一緒にプレーしたほど。その経験から、スポーツに垣根なし、ということを実感しましたし、体験するって大切だなとつくづく思いました。

影山さん:私も以前は福祉的な視点で捉えていて、パラサポの職員に応募した際も、「少しでも障害のある方たちの力になれれば」なんて考えていたんです。でも、この仕事に携わるようになって、パラスポーツはスポーツの一分野として確立しているし、力強い魅力のあるものだと分かりました。

今林さん:いまパラスポーツで行う運動会「あすチャレ!運動会」を担当していますが、皆さん、やり始めると障害の有無に関係なく、童心に返って楽しんでくれます。車いすを使う競技では、健常者より車いすユーザーの方が断然操作がうまいので、今までずっと運動会を見学してきた車いすユーザーが会場のヒーローになることもしばしばなんです。そういうシーンに出会えるのも楽しみの一つですし、やはり体験することで気づくことって多いんだな、と皆さんの様子を見ていても改めて感じています。

ParaFesだけでなく、「あすチャレ!運動会」 も担当している今林さん

―今後、パラフェスをどんなふうに育てていきたいですか?

山口さん:東京パラリンピックへ向けて、今年は「ホップ・ステップ・ジャンプ」で言えば「ホップ」の年と捉えています。2020年に多くの方たちと一緒に盛り上がっていけるような線を描いていきたいです。そして、東京大会が行われる2020年にも、ぜひパラフェスを開催したいと思っています。もちろん、時期は未定ですけど。

影山さん:「パラフェスを新国立競技場で!」。これが私の野望です。今年は「観て感動する」ところにはたどり着けると思っているのですが、もう一段階上のレベルである参加型のステージに育てていきたいですね。そのためにも、アーティストのライブのように、出演者と観客を含めた会場全体が一体となって、ひとつのフェスを作り上げるような仕組みを考えたいです。

山口さん:そのためにも、一流アーティストがコンサートをする新国立競技場は外せないというわけだね。

影山さん:はい。そもそもスポーツって、「楽しい」「うれしい」「つらい」「悲しい」といった感情を、会場にいる競技者と観戦者がみんなで共有できる稀有なコンテンツだと思いますし、そんな一体感が味わえるスポーツが私は大好きなんです。いまはパラフェスの本番を目前に控え、めちゃくちゃ忙しいんですけど、大好きなスポーツのイベントに関われているので、すごく楽しいんですよ。パラサポ内の「i enjoy ! ランキング」があったら、私、1位だと思います!

今林さん:僕もいちばん楽しんでいる自信あるけど......!

山口さん:まぁ、ふたりとも落ち着いて。とにかくパラスポーツやパラアスリートの魅力を多くの方と共有できるよう、チーム一丸となってこのパラフェスを成功させよう!

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